エジプト中部の都市ルクソール。
もっとも有名な観光地といえば王家の谷(Valley of the Kings)が思いつくのではないでしょうか。旅行会社のツアーだと、熱気球による遊覧やハトシェプスト女王葬祭殿(Mortuary Temple of Hatshepsut)の観光も組み込まれたりしていますね。
そんなルクソール、実はカルナック神殿(Temple of Karnak)も見どころ満載の素晴らしい観光地ってご存じでしたか?
カルナック神殿の見どころは、なんといっても圧巻の「大列柱室」。あまりの大きさに、古代人の技術力の高さに感嘆すること間違いなしです。
1.カルナック神殿とは
(1)ルクソールについて
ルクソールはエジプト中部に位置する都市で、古代エジプトにおいては都市テーベ(古代エジプト語でワセトWaset)が栄えていた場所です。テーベは、新王国時代にはエジプトの首都でもありました。その遺構は現在もルクソールの中一帯に眠っています。
また、テーベはエジプトにおける信仰の中心的な役割も果たしており、紀元前677年にアッシリア王アッシュールバニパル(Assurbanipal)がエジプトを攻撃し、テーベが政治的力を失って以降も、宗教的中心にありました。そのようなテーベにおいて、テーベの守護神を祭る神殿がカルナック神殿だったのです。
★エジプト読み解きポイント★
エジプトはナイル川を隔てて、東西で「生者の街」と「死者の街」に分かれていました。
ナイル川の東側、すなわち太陽が昇る方角にあるのが生者の街。古代における生ける人々の居住地はもちろん、ルクソールのカルナック神殿やルクソール神殿はナイル川の東側にあります。
そして、ナイル川の西側、命の象徴である太陽が沈む方角が死者の街(ネクロポリス Necropolis)。ルクソールにおける王家の谷や、ギザの三大ピラミッドももちろん、ナイル川の西側に建造されました。
古代エジプトの人々にとってナイル川は、生者の都と死者の都を東西に分かつ「三途の川」だったのでしょう。
また、エジプト旅行時にガイドさんが「古代の人々にとって、太陽とは『太陽神ラーが人々の前に姿を現したもの』であり、次の日もその次の日も、ラーが人々の前に現れて夜を照らしてくれること願っていた。必ず朝が訪れるようにと。当時の人々にとって、夜明けとは『命のはじまり』だったんだ。」と語ってくれたことも印象に残っています。
(2)カルナック神殿の概要と歴史

カルナック神殿は、古都テーベの守護神であったアメン神を称えるために建造された神殿でした。
正式にはカルナック神殿複合体と呼ぶのが正しいですが、その大半をアメン大神殿(アメン=ラーの神域)複合体が占めており、また観光客が見学できる場所もアメン大神殿複合体に限られていることから、しばしば「カルナック神殿複合体=アメン大神殿複合体」と解釈されてしまうようです。
また、カルナック神殿の副神殿として建造されたのが、同じくルクソールに存在するルクソール神殿。カルナック神殿から南に2~3km離れた場所にあり、両神殿を繋ぐ道としてスフィンクス参道が整備されています。この参道にはスフィンクス像が配置されており、その数なんと、1200体。


これはホテルの部屋から見えたルクソール神殿。明るい時間帯に見学してきましたが、本当にスフィンクスが参道沿いにずらーっと並んでいて、カルナック神殿との繋がりを実感しました。
(3)見どころは「大列柱室」

カルナック神殿における最大の見どころは、アメン大神殿複合体内にある「大列柱室」。ここは絶対に見ておくべきポイントです。
大列柱室は、幅102m、奥行き53メートルの空間で、16列に整列された巨大な列柱が134本もひしめいています。それらの列柱のうち、中央2列に並ぶ12本は高さが約21m。ぱっとイメージ湧きませんが、マンションで考えると7階くらいの高さ。これを人の手だけで作り上げたのですから、古代人ってとんでもない…。
実際にその場にいると「人間って、なんてちっぽけなのだろうか…」と感じちゃいました。感覚が行方不明になるほど、その巨大さ・偉大さに圧倒されます。
(4)アクセス・入場料金等
カルナック神殿は、ルクソール市内にありアクセスしやすいです。ルクソール国際空港からであれば車で15分、歩いても1時間50分くらいです。
エジプトはタクシー代がとても安いので、Uberなどの配車サービスを利用してサクッと移動しちゃうのもいいですね。
カルナック神殿は入場料が必要で、エジプトポンドで200、米ドルで10ドルとなっています。
営業時間は時期によって変動の可能性があるため、旅行前に再確認しておくことをおすすめします。(記事化にあたり、複数のサイトを調べましたが、いずれのサイトも営業時間情報が異なっていたため。)
遺跡名称 | カルナック神殿(Temple of Karnak) |
アドレス | Egypt Luxor Governorate, Luxor, Karnak |
営業時間 | 9:00~17:00 |
入場料 | 200エジプトポンド もしくは 10米ドル |
関連HP | カルナック神殿(wikipedia)、トリップアドバイザー |
2.無数の大列柱、人物像、壁画は圧巻の様相
(1)高さ21メートル、圧倒されるしかない
スフィンクス参道側から、いざ、カルナック神殿へ。


お。大きい…!
首が痛くなる。これ、どうやってここまで運んで、積み上げたの…?全部人の力なんですよね…


大列柱室の柱のうち、真ん中2列の高さは21メートル。本当に古代エジプト人、すごすぎるよ…
なお、大列柱室の真ん中2列の柱は「開花式パピルス柱」といいます。柱の上の部分が円形に広がっていますよね。これが花が咲いているように見えるため、このように呼ばれています。
そして、大列柱の描かれているのは、神話における天地創造の大地に生えた葦(パピルス)の湿原。




これは私が一番好きなカルナック神殿の写真。見上げたはるか頭上にある柱、自分のちっぽけさを思い知りますね。


水色の空と、大列柱。なんて綺麗なんだろう。
(2)人物像や壁画も見どころ
大列柱以外にも見どころはたくさん。これは、ツタンカーメンをその妃の像。若々しい二人の様子が伝わってきますね。

そして、ヨーロッパ各地でも見かけるオベリスク。エジプト本家でようやっと拝めました。
なんでヨーロッパのお偉いさん方は、こぞってオベリスクを自国でかざったのだろう…?



壁画、高すぎて上の方何が書いてあるのか…首が…

大列柱にも、いろんな情報が彫られています。いくつか見える、楕円形(中に記号が彫ってある)ですが、これはカルトゥーシュと呼ばれるもので、円形の中にファラオの名前を示すものです。露店のお土産屋さんなんかでは、カルトゥーシュの中に自分の名前を彫ってもらえます。
★エジプト読み解きポイント★

エジプトでは、ヒエログリフ(神聖文字)・ヒエラティック(神官文字)、デモティック(民衆文字)の3つの象形文字が使われていました。
遺跡の壁画などに使用されている文字は、殆どがヒエログリフ。紀元4世紀頃までは読める人間がいたのでは、と考えられていますが、それ以降、読み手を消失。19世紀になって、古代エジプト学者であるシャンポリオンがロゼッタ・ストーンを解読したことで、再び人間が読むことが可能となりました。
3.エジプト・ルクソールのおすすめ観光地です
ルクソールは、新王国時代にはエジプトの首都であったほど繁栄を極めた場所です。
ナイル川を挟んで東側(生者の都)には、カルナック神殿やルクソール神殿といった神聖な遺跡が、西側(死者の都)には、王家の谷をはじめとした死にかかわる遺跡が数多く存在しています。
見どころの多いルクソールですが、なかでもカルナック神殿は必見。大列柱室に並ぶ、高く、大きな柱に、きっと古代人の凄さ、これらを造り上げた王の威厳を感じることができるはずです。
全長2kmのスフィンクス参道でつながっているルクソール神殿と一緒に、観光してみては。
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